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さまざまな制約を乗り越えて、お客さまが望む中継車を組み上げる(後編)NEW

テクノロジー

    40年にわたる歴史を積み重ねてきたソニーの中継車ビジネス

    ソニーでは、1980年に中継車ビジネスを開始してからこれまでの間に、通算数百台もの車を世に送り出してきました。車両の調達から納品までをワンストップで行っており、放送業界で長年培ってきた技術力で高い信頼性と品質を持ち合わせた中継車を、放送局や映像制作プロダクションを中心に、野球やサッカー、ゴルフといったスポーツ中継から、音楽ライブやイベントなど、さまざまな映像制作の現場に提供しつづけています。中継車には主に報道用と番組制作用の二種類があり、そのうちの番組制作用の大型中継車において、当社は日本全国のお客さまから多くの支持をいただいています。

    今回は、40年にわたる歴史のなかで実績を積み重ねてきたソニーの中継車ビジネスの、これまでの取り組みとこれからの展望について、日々奮闘する技術者の視点でご紹介します。

    現場に通い、お客さまの目線でオンリーワンの中継車を提供

    中継車の製作は、よく住宅の建築に例えられます。それも、建て売りではなく、フルオーダーの注文住宅です。お客さまの目的や用途によって求める中継車はそれぞれ異なり、この世に2つとして同じものは存在しないといっても過言ではありません。中継⾞は“⾛るスタジオサブ”とも言われ、スタッフの方々は⻑ければ6時間以上、モニターに囲まれた⾞内で番組制作を行います。やり直しがきかない緊張感のなか、最⾼のパフォーマンスを発揮できる空間を求めるお客さまからのご要望が多くなるのは、当然のことかもしれません。共同テレビジョン様の事例では、車体の左右の幅を広げる「両拡幅」と、進行方向左側については車両全長にわたって拡張する「全拡幅」という構造を採用。機材をフル装備しつつ広々とした制作スペースを確保したい、というお客さまのご要望にお応えすることができました。

    製作にあたり、私たちはまず、お客さまがどのような中継車をつくりたいかをヒアリングし、ご要望を深く掘り下げることを心がけています。また、必要に応じて、お客さまが現在使用されている中継車を見に行くこともあります。実際の現場に足を運びお客さまの目線でじっくり観察することで、机上の図面には表れない、お客さまが潜在的に抱えている悩みに気付くケースがあるからです。そこから、車の足回り機構であるシャーシの選定・発注に5ヵ月、架装部分の製作に4ヵ月、機材の設置や配線工事などに3ヵ月の工程を経て、1台を製作するのに1年以上の期間をかけてお客さまに納品しています。

    左側は、1.2mの全拡幅を実現

    右側はモニター部分が0.8m拡幅

    拡幅構造により広大なスペースを得た制作エリア

    VEエリア

    納品後のことまで考え抜いて磨き上げてきた、“匠の技”

    中継車を含めた大型車両には総重量20トンを超えると、走行に申請が必要になるという制約があります。そのため20トン以下に抑えるよう、設計段階で部品の点数などをグラム単位でできるだけ正確に割り出し、少しでも軽量化するための工夫を行っています。特に、1台に使用されるケーブルの量は5、6,000本を超えるため、できるだけ細い最新のケーブルを採用することで軽量化を図っています。また、それだけ多くのケーブルを使用すると、機材のメンテナンスを行うのもひと苦労です。そこで、ケーブルを信号の種類や機能ごとに分類し整理することで、お客さまに納品したあとのメンテナンス性まで追求した、ソニーならではのケーブル処理の技術が生まれました。長い年月をかけて培われてきたこの熟練の技術は「匠の技」と呼ばれ、お客さまからも高い評価をいただいています。

    中継車制作中の様子

    メンテナンス性を追求した結果、機器ごとにケーブルを束ねた美しい配線が実現(株式会社クロステレビ様の中継車)

    ケーブルの色はお客さまご指定で、信号の種類によって各色を使い分ける(株式会社共同テレビジョン様の中継車)

    「匠の技」と呼ばれる、ソニーならではのケーブル処理技術(西尾レントオール株式会社様の中継車)

    先を見据えた技術を取り入れ、十年後も変わらず活躍できるシステム設計

    中継車は一度納品すると、十数年もの間お使いいただくものです。そのため、お客さまには将来的な展望まで見据えた、すぐに陳腐化することなく十年後も第一線で活躍するシステムを提案しています。たとえば、4Kや8Kといった最新の映像技術にいち早く対応できるのは、映像の分野で業界をリードするソニーならではの強みです。また、放送業界におけるIP化の流れをとらえ、従来の同軸ケーブルから光ケーブルに置き換えることで、大容量の映像や音声を1本のケーブルで伝送することを可能にするといった、お客さまのご要望に合わせて最先端の技術を取り入れたシステムを構築しています。しかし近年は、凄まじいスピードでデジタル機器が進化しており、技術そのものが陳腐化することもあります。そのため、部分的に機材を入れ替えてお客さまのご要望に応じた最新のシステムを再構築するなど、トップブランドとして業界のトレンド自体をつくりつづけられるよう、日頃から新たな技術にチャレンジしています。

    最新のシステム構築を目指すなかで、時には、搭載予定の機材開発のスケジュールが遅れて、中継車全体のシステム設計を同時並行で行わなければならないこともあります。新しい機材に関する具体的な情報がないなかでも、過去の経験と技術動向をもとに仕様を推測して、限られた中継車のスペースでさまざまな状況を想定したシミュレーションを行いながら、対応策を練り上げます。ここは、技術者としての腕のみせどころかもしれません。

    時代の変化に合わせて求められる中継車をつくりつづける

    近年、車内での長時間の番組制作でもスタッフの方々が快適に過ごせる居住性の向上や動線の確保といった空間設計や、内装の色などのデザイン性がますます重視されるようになってきています。そういったエレクトロニクスの知識だけでは補えないところは、お店や電車のなかなど普段の生活からヒントをもらい、より良い中継車の製作に生かしています。また、ソニーが新たに提供しているリモートプロダクションを活用することで、車内に常駐する人数を必要最小限に抑えられることも考えられます。それにより、昨今の新型コロナウイルス感染症において問題視されている、いわゆる“3密”を避けることができるほか、より効率の良い働き方改革への貢献も期待できます。
    さらに、将来の可能性として、話題になっているARやVRの技術を中継車に取り入れることができれば、今後さらに映像表現の幅が広がるでしょうし、ドローンをもっと活用することで、災害の現場で人が立ち入れないような場所の状況を伝えたりできるようになるかもしれません。これからも、変わりつづける時代に合わせた中継車のあるべき姿を常に模索し、お客さまにご満足いただける1台を変わることなくつくりつづけていきます。

    この仕事を担当するようになって20年ほどになりますが、一度ものすごく難易度の高い課題を与えられ、苦心しながらもお客さまが期待する以上のものを納品できた時、「今回は負けた!」というお言葉をいただいたことがありました。あの時は本当にうれしかったですね。これまで先輩方から受け継いできた、常にお客さまの想像を超えるものをつくろうと努める当社の姿勢や情熱がご理解いただけた瞬間でした。中継車を製作する際、まずはお客さまのご要望を伺い、できる限りこだわりを叶えられる道を真摯に探り最善策を導きだしていきます。しかしその際に聞きだせるのは、本来のご要望のうちせいぜい50%。言葉にならない残りの50%を私たちが汲み取ることで100%にしますが、ここで満足することなく、さらに+αを加えて120%のものをご提供する。この積み重ねがお客さまをリピーターへと変え、新規顧客を開拓することにつながってきたのです。私は代々継承されてきたこのバトンを次の世代へ託していきながら、これからもソニーの中継車ビジネスを発展させていきたいと思っています。

    ソニービジネスソリューション株式会社 技術担当 毛利

    ソニーの中継車が選ばれる理由としては、グループ全体で築いてきたブランド力もあると思います。しかし、過去に担当したお客さまから「またあの人にやってほしい」と指名で声をかけていただけることもあり、この事業は、人と人との信頼関係によって成長しつづけてきたんだなと改めて実感しています。私自身、「水谷さんなら何とかしてくれる!」と直接言われたこともあり、うれしい反面、身が引き締まる思いでした。また、若手技術者にも中継車製作のプロジェクトリーダーを任せてもらえること自体、やりがいであり挑戦でもあります。時には思うようにいかず悩むこともありますが、納品した時に喜んでいただけた顔を見ただけで、すべてが報われたような達成感があります。こういったお客さま第一の姿勢など、先輩技術者から学んできたことを胸に、放送業界をリードしてきた当社だからこそ実現できる、最新の映像技術や映像伝送の仕組みを取り入れた中継車を、これからもつくりつづけていきたいです。

    ソニービジネスソリューション株式会社 技術担当 水谷















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