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SPECIAL INTERVIEW Vol.03 次世代を担う人材育成に向けて ICT技術の進化が新たな教育スタイルを拓く 早稲田大学 前理事(研究推進部門総括・情報化推進担当) 図書館長 深澤 好彰先生

少子高齢化、学生の質の変化、大学間の世界的な競争激化など・・・。大学を取り巻く環境は風雲急を告げている。この変化に的確に対応していかなければ、生き残ることすら難しい。国内における私学の雄である早稲田大学とて例外ではない。早稲田大学は、2032年に創立150年を迎える。そのとき、早稲田大学はどうあるべきか。その将来像を描いた「WASEDA VISION150」を策定した。その中で、大学を取り巻く環境変化に対応するための方策のひとつとして、情報通信技術(以下ICT)投資を積極的に進めていくことを明記している。
今回は、早稲田大学のICT化推進のリーダーシップをとる深澤良彰先生に、ICT化を推進する背景、具体的な進め方、将来のあるべき姿などについて聞いた。
(聞き手:ソニービジネスソリューション株式会社 執行役員 営業部門長 田中 誠)

大学を取り巻く3つの変化


私たち早稲田大学は、現在、ICT投資を積極的に進めているが、その背景には、大学を取り巻く3つの変化がある。
1つは、学生が変わってきたことだ。ひと昔であれば、90分の講義を通して、「先生が話して、学生がノートをとる」という姿が成立していた。しかし、最近ではこれがなかなか難しい。学生の根気が続かなくなっているからだ。そこで先生側は、学生の集中が続くように、ICTツールを利用することで講義の仕方を工夫することを求められている。
2つめは、ICT技術が大きく進化していることだ。新たな機器が次々に登場している上に、それらの機器のコストダウンが急速に進んでいる。大学に導入して活用できるものがどんどん増えている。
3つめは、大学の講義のオープン化が進んでいることだ。かつて、大学の講義は、先生と学生だけのクローズなものだった。それが最近では、「OCW(Open Course Ware)」や「MOOC(Massive Open Online Courses)」などに代表されるように、社会貢献や地域貢献を目的に、講義内容を学外に提供するようになってきている。講義をビデオ撮影して字幕を入れて、コンテンツとして学外に提供するわけだ。

ビデオによる講義例

ビデオによる講義例

早稲田大学が運営するWASEDA COURSE CHANNEL

早稲田大学が運営するWASEDA COURSE CHANNEL

教える側と教わる側の意識改革が急務

WASEDA e-Teaching Award授賞式

WASEDA e-Teaching Award授賞式

もちろん、ただ闇雲にICTツールを導入すれば、期待した効果が得られるわけではない。先生や学生にうまく活用してもらえなければ、ただの箱である。いかに活用してもらうのか。先生側、学生側の双方に対しての働きかけや工夫が必要だ。
先生に対しては、ICTツールの活用方法に関するノウハウや経験、事例を伝えなければならない。そこで、先生の部屋に出向いてマンツーマンで説明する、学習用のコンテンツを用意するなどの活動を行っている。
この活動に弾みをつけるために、「WASEDA
e-Teaching Award」という教員表彰制度を用意している。ICTツールを使って先進的な講義をしている先生を表彰し、その講義手法をほかの先生に紹介するというものだ。良い教育に取り組んでいる先生の講義手法を、学内に周知させることで、教える側の意識改革を後押ししたいと思っている。

使いやすいICT環境下でアクティブラーニングを推進


一方、学生に対しては、使いやすい環境を用意することが欠かせない。情報データ系のシステムを利用するときでも、映像系システムを利用するときでも、均一な使用環境を提供しなければならない。見たいときに、見たいものが見られる。それが大事だ。通常、ICTツールは複数のベンダーから導入するので、ベンダー同志の連携が重要だ。現在、私が会長を務める『早稲田大学デジタルキャンパスコンソーシアム』(DCC)の活動を通じて、さまざまなベンダーが連携をとりながら、調和のとれたICTシステム全体を設計する土壌を整えつつある。
実際の教育において、ICTツールをいかに活用するのか。一つの答えがアクティブラーニングや反転授業と呼ばれる授業形態だ。アクティブラーニングとは問題解決型学習という意味で、一方的に講義を聴くだけでなく、授業においてグループワークやディスカッションを行う学習方法のこと。また、反転授業とは、あらかじめ与えられた課題について、学生が自宅などで調査や検討を行い、実際の授業では予習してきた内容に基づいて、主体的に課題に取り組む授業形態のことである。いずれの場合も、ICTツールが大きな役割を果たす。ビデオ映像を活用して学生同志のアイデアの共有する、ビデオ会議を使って海外の学生とディスカッションを行うなどにより、こうした新たな学習形態を支援している。今後、各授業をいかにこのレベルに発展させていくかが重要なポイントになるだろう。

ソニービジネスソリューションへの期待

深澤良彰先生(右)と田中誠(左)

深澤良彰先生(右)と田中誠(左)

デジタルペーパー

早稲田大学 人間科学学術院 向後千春教授のゼミにてデジタルペーパーを活用

早稲田大学とソニーとの付き合いは、実に20年以上前にさかのぼる。その間、単にハードウエアの納入のみならず、コンテンツ配信システムの構築や大学構内の常駐サポートなど、技術支援、運用支援という貢献をしていただいている。私自身が関わったものとしては、2009年に、現11号館のICTインフラ整備をともに行ったことが記憶に新しい。最近では新3号館にソニーの新しいレーザー・プロジェクターやビジョンプレゼンターを導入し、アクティブラーニングの実現に向けた環境整備を進めている。
早稲田大学の将来像を描いた「WASEDA VISION150」にも記載されているが、われわれは、2032年までに、すべての講義をオープンにすることや、アクティブラーニングの割合を増やすことを目指している。そのためにも、ハードウエアの整備だけではなく、ネットワーク上に載せるコンテンツの整備にも力を入れていく必要がある。最終的には、ICTをいかに有効活用して人材育成にどう貢献したのかが問われるからだ。
ソニーとは、作り手と使い手という立場は異なるものの、こうした取り組みに協力をお願いしたい。教育におけるニーズは、シーズによって変化する。良いツールがあれば、今までにはない教育方法を思いつくかもしれない。そのため、ソニーと話し合う場を用意し、コミュニケーションを大切にしながら新しいものを生み出していきたい。
新しいものの代表例として、デジタルペーパーがある。手書きでノートをとる感覚で使えるうえ、書いたものがすぐにデジタルデータ化できる。早稲田大学のゼミでも実験的に使わせてもらい、そこで出た様々な要望事項を現場の意見としてソニー側にフィードバックしている。私は、大学は、実験の場でいいと考えている。教育の現場で使えるかどうかは、使ってみなければわからない。ソニーには、常に新しいものに挑戦する社風があると思っており、早稲田大学の理念と共通するものがある。次世代を担う人材育成に向けて、ともに新たな教育スタイルを拓くパートナーでいてほしい。

インタビューを終えて EDITOR'S NOTE

photo ソニービジネスソリューション
執行役員 営業部門長 田中誠

ICTの利活用により教育スタイルの変革が求められる昨今、最前線でリーダーシップを発揮されている早稲田大学の深澤先生より、教育現場における課題や今後の方向性のお話を伺う機会をいたただき、感謝しています。
ソニービジネスソリューションは、得意とするAV+IT技術を駆使して、教室内の視聴覚設備、遠隔講義等のシステム構築に加え、近年ニーズの高まりつつあるアクティブラーニングや、講義収録・Web公開などのソリューションを開発しております。今日、教育現場を熟知した先生からのお話を通じて、ソニーとして、今後も教育の発展のための新たな技術開発への取り組みを継続することに加え、現場の先生方がより使いやすい機器の開発という点でも、さらに努力していく必要があると感じました。今後とも、教育界のリーダーである先生よりご指摘をいただきつつ、教育の将来に貢献できるような企業でありたいと思います。